お菓子にまつわる100の物語
■主役はお菓子の物語
シュークリームやドーナツ、パン・デピス、タルト・タタン、カンノーリ……
お馴染みのものからその土地ならではの郷土菓子まで、100種類のお菓子の経歴を紐解く「菓の辞典」。
著書は当店でご紹介している野菜の本「菜の辞典」を手掛けた長井史枝さんです。
「『菜の辞典』は野菜を食べるときの相棒のような、キッチンにあるちょっとスタイリッシュな手引書のイメージでした。
一方『菓の辞典』は、読後の余韻を楽しんでもらえるお菓子が主役の読みものにしたかったんです」
「いまおいしい情報はいろんな発信元から流れてくるので、頭の中は常に満腹に近い状態です。
そのおかげで新しい発見に事欠かないけれどもう少しゆっくりじっくり、いろんな楽しみ方があってもいいのになぁと思っていました」
■国から国、人から人へ。お菓子の歴史
「菓の辞典」はその名の通りindexを頼りに気になるお菓子を調べることもできれば、古代から現代まで歴史書のようにも読める本です。
十字軍の遠征や王女様が他国へお嫁入りをしたときに、郷土菓子も普及・発展していくなど、へ~って発見も。
知らず知らず食べていたお菓子の歴史を知ると、ちょっと感慨深くなります。
▲スコットランド生まれのスコーンの名は「石」に由来。その理由はぜひ本書で
「私は、人気のお菓子は行列が落ち着いたころに食べようという、もともと流行にのれないタイプ。でも、お菓子が生まれた背景や逸話を知るとがぜん興味がわくんです。
たとえば本の中にはバウムクーヘンで有名な『ユーハイム』の話が登場します。創業者のカール・ユーハイムさんが戦禍ののち亡くなると愛弟子たちが資金を持ち寄ってお店を復興したというお話です。
そういう話を知ると『バウムクーヘンってなんて愛あるお菓子なんだろう!』と感激して、お世話になった方への贈りものにしたり」
「ひとつのお菓子が国や時代を越えて、ときに名前や形も変えて社会に馴染んでいく様子は人間と似ていて面白いなぁと思います」
▲ブックデザインは増喜尊子さん。折しも制作中に、手がけたZineが料理本のアカデミー賞といわれる「グルマン料理本アワード」を受賞
■時代や国を旅するように
お菓子の誕生物語は全部で100話。いのうえ彩さんの描きおろしイラストとともに紹介されています。
▲お菓子を目の前にしたときの高揚感をもたらす、いのうえさんのイラスト
さらに各国のお菓子MAPやお菓子にまつわる人物紹介も。ふと読んだお話の数々がお菓子を味わう時間をより楽しくしてくれそうです
「おやつの時間にPAULの『パルミエ』と日本の『源氏パイ』を並べて、その大きさや味の違いを実感しながら食べ比べるのも一興。
いつもと違う味わい方をしてみたらちょっと幸せな気分になった……そんな風に感じてもらえたら嬉しいです」
SHOPPING MEMO
著者:
サイズ:A6判/上製/256p/オールカラー
発売日 : 2022/12/9
出版社 : 雷鳥社